今回取り上げるのは十全大補湯の話です。
十全大補湯は、気と血を補強する代表的な補薬の一つで、疲労が溜まり気血の消耗が激しい時や手術後の気力回復などに飲まれることが多いイメージです。
虚弱体質だった韓国にいる母親が、韓医院で十全大補湯を処方され飲んでいたことを思い出します。
まず、あらすじですが、第五話までのお話で、ホジュンは将来奥さんになるタヒさんと別れて故郷を離れることになり、山陰地方に辿り着きました。タヒさんはホジュンを探して長旅に出かけます。
第六話で、タヒさんは山陰地方には着いたのですが、まだあちこちホジュンの居場所を一生懸命に探し回り、ある日疲労で倒れてしまいます。
その時ホジュンの師匠の柳イテ先生がやっている医院に運ばれることになりますが、柳先生は遠方へ往診に出かけており、イェジンさんと柳先生の助手のオグンさんが診ることになります。
オグンさんはタヒさんの脈を見て“脈がゆっくり打っていて、時々止まる”といいます。
イェジンさんは、それは「結脈」ではないかといい、“結脈で、息が短く、唇の色が黒なので、肺労のようである” “肺労によって、意識がなくなった時には苦いものを食べさせて肺に溜まっている気を治めることです。陰が盛んでいるときは結脈が表れるのです。直ちに病人の陽気を補充すべきです”
二人は直ぐにタヒさんに人参液を飲ませ、独参湯(人参のみで作った湯薬)を処方します。
その後、柳先生が戻られ、イェジンさんらにタヒさんの状況を確かめます。
イェジンさんは、“病人は長い旅の旅毒で虚労症状を見せていました。息が短く、唇が黒いのを見ると肺が害されているようです”
柳先生の指示で再び脈を確かめると、今度は“脈が速く打って、時々止まります。「促脈」のようです。”
柳先生は言います。“病人の状態は昼夜で変わる。経過には神経を使って観察していかなくてはならない。陰が虚しているときには薬より食補にもっと気にかけるべきだ。この病人は陰と陽ともに虚しているので、十全大補湯を処方する”
“人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、桂皮(けいひ)、甘草(かんぞう)を処方せよ“
長旅からの疲れと神経衰弱で虚労状態になったタヒさんは、結脈(遅くて不規則な脈)と促脈(速くて不規則な脈)という反対の脈状を示していました。脈が不規則になっているのは血の不足によることがあります。その上に脈が速かったり、遅かったりしているのは、陰が虚したり、陽が虚したりして、陰と陽がアンバランスな状態になり、ともに虚している状態を表します。このようなときに処方されるのが、虚弱や疲労によって虚している気と血を治療し、陰陽の調和を整える十全大補湯なのです。
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