<ホジュンから見た東洋医学の話:食事と自律神経>
今日の話のためのエピソードをまずご紹介します。
ホジュンと母親が故郷から遥々南の地方に逃げ出して、母親が長旅の疲れからなのか、急に具合が悪くなります。冷や汗をかいてお腹が痛いと苦しんでいます。ホジュンは名医で知られている柳イテの院に母を連れていきます。医院には患者さんがすでにたくさん集まっていて、柳先生は次々と患者さんを診て回りますが、ホジュンの母親にはあまり目向きもしません。ホジュンは今か今かと待ちますが、柳先生はそのまま帰ろうとします。ホジュンは必死になって母を見てくれと訴えます。柳は「長旅の船酔いのせいでお腹が狂った状態で食事をしたのでこうなっただけで、病気ではない。家に帰って温かい水で足を数回洗ってあげれば楽になる。」と言いいその場を離れます。ホジュンは「船酔いとはなんだ。船に乗ったのを見たのか。うちらは船に乗ったことがない!」と嘘抗弁しますが、柳先生は何も言わず見つめるだけ。隣にいた柳先生の助手の人が「柳先生は5~6日前にお葬式を行った喪主の体から死体の匂いが分かった方だぜ。黙って言われたとおりにやれ。」次の場面。ホジュンの母親が足湯をして、「ずいぶん楽になったよ。治ったようだよ」と微笑みながら言います。
長い旅でしかも船酔いで疲れたホジュンの母は、故郷から逃げ出すという状況で肉体的だけではなく、精神的にもすごいストレス状態であったでしょう。新しい土地にようやく着いて、ゆっくり休むこともできないまま食事をしたので、飲食物を入れる準備ができていない胃腸は不調になったわけです。そもそも食事という行為ができるのは、副交感神経が優位になり胃腸が飲食物を受け入れる準備ができた状態でないとうまく消化のプロセスが作動しません。ストレスなどで交感神経が活発になっている状態では、副交感神経は働けず、食事モードにはなれないのです。交感神経が活発な状態というのは、分かりやすくいうと動物が獲物を発見して追いかけているとき、また敵に攻撃されて必死に逃げ出すときというようなときです。このようなときに食事なんて考えられませんよね。ではホジュンの母親が温かい水で足を温めたことで体の具合がよくなったのはなぜだったのでしょうか。それはまず自律神経的な解釈をすると足を温めることで体も温まり、自律神経が安定してきたことで心身の疲労が取れたことでしょう。極限の心身疲労の状態では食事は控えること。心身疲労の時には先にお風呂で体を温め疲労を取ってから食事をすることですね。
参考文献:よくわかる経絡治療講義(著者:大上勝行)
寝てもとれない疲れをとる本(著者:中根一)
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